立正大学(熊谷キャンパス=熊谷市万吉)の学生が取材・制作した秩父鉄道発行の沿線情報誌「PALETTE(パレット)」特別号「別冊PALETTE 地理学科と行く!秩父鉄道の旅 人生はフィールドワークだ!」が現在、秩父鉄道各駅、西武鉄道や東武鉄道、JR東日本の一部駅で配布されている。
「別冊 PALETTE」。冊子内容は、秩父鉄道公式サイトから閲覧できる
立正大学と秩父鉄道の産学連携、地域包括化の取り組み。立正大学地球環境科学部地理学科交通地理研究室(山田ゼミ)の3年生13人が沿線地域の文化や魅力を探求し、秩父鉄道の協力で実現した。
秩父のベンチャーウイスキー蒸溜所や、寄居の養豚産業など「食」を通じて学んだ沿線文化や歴史に目を向け、道の駅・直売所にあふれる「人」の魅力を紹介。電動レンタサイクルを使った「絶景スポット」のモデルツアーを提案するほか、かつて羽生・熊谷間をつなぐ鉄道として創業した「北武鉄道」沿いの観光スポット、ロケ地巡り、城跡巡りも取り上げる。
「交通地理研究室だが、あえて交通ではなく沿線地域の魅力、文化を学生目線で探してもらった」と話す専任講師の山田淳一さん。グループ、個人に分かれてテーマを決め下調べ、秩父鉄道へのプレゼンを経て取材を進めた。秩父鉄道沿線に住む学生ばかりではなく、初めて訪れ土地勘のない学生もいたという。
「食から学ぶ沿線文化」を担当した学生からは「実際にフィールドワークを行って出会った人から、地域や自分の仕事を大切にする熱量が伝わってきた」「資料だけでは分からなかった背景を知ることができた」「町役場や直売所、商工会の方々に快く協力してもらいありがたかった。ページに収まり切れない情報が集まった」などの感想が聞かれたほか、「これまで秩父鉄道沿線のイメージは『観光』がメインだったが、地域の文化を知るきっかけになった。紙面で伝えきれなかった魅力もたくさんある。さらに深掘りしたい」と今後の研究対象を見据えた声もあった。
山田さんは「地理学にフィールドワークは欠かせない。コロナ禍で、接触を局限しながら濃く取材をしなければならないという矛盾の中、学生たちはよく頑張った。今はまだ実感が湧かないかもしれないが、今後、卒業研究や仕事を始めてからこの経験が生きてくるのでは」と期待を込める。
PALETTEは2017(平成29)年11月から毎月発行している秩父鉄道沿線地域の情報誌。学生らは専門性を生かしながら取材した情報をまとめ、「情報誌」として興味を引くフレーズ、読みやすさなどを工夫。秩父鉄道企画部の中澤さんは「学生ならではの目線で、観光だけでなく沿線地域の文化から紹介してもらえたのが良かった。養豚産業や電動自転車のレンタルの紹介など新鮮な試みもあった」と笑顔を見せる。
仕様はB5サイズ、カラー見開き8ページ。4万部発行。駅での配布はなくなり次第終了。