乳がんの啓発イベント「母の日キャンペーン」が4月15日、熊谷総合病院(熊谷市中西)2階のKUMASOUホールで行われた。
中村康平医師の講演「遺伝子の情報を活かしたがんの治療・予防について」
NPO法人「くまがやピンクリボンの会」が、乳がんのことをよく知ってもらおうと行っている啓発活動の一環。新型コロナの影響でイベント開催は3年ぶり。同NPOと地元病院の初コラボレーションイベントとして企画した。
当日は熊谷総合病院婦人科・遺伝性腫瘍科、慶應義塾大学腫瘍センター・HBOCセンターに在籍する中村康平医師が、「遺伝子の情報を活(い)かしたがんの治療・予防について」講演を行い、がん遺伝子の変化を説明。遺伝性腫瘍の特徴やがん診療における遺伝学的検査の意義を説いた。中村医師は「乳がんは日本人女性の9人に1人が罹患(りかん)する頻度の高い病気。その中の1割は、生まれつき乳がんになりやすい体質を持っているといわれている。よく『がん家系』という言葉を耳にするが、実はその約8割は心配ない。肺がんはほぼ遺伝せず、環境要因が大きい。遺伝に関する正しい情報を知ることで、本人や家族の健康を守ることにも役立つ」と話した。「心配な場合は、がんの種類に関係なく相談して」とも。
講演後には乳がん啓発運動指導士の蓮沼富久恵さんを講師に、「リフレッシュ体操」を行った。参加者らは椅子に座ったまま、手話を取り入れた「手のひらを太陽に」を歌ったり体を動かしたりし、会場内はリラックスした笑顔が見られた。
注目が集まったのは、館林厚生病院内視鏡内科兼予防医学センター長で熊谷総合病院健診センターの新井弥生医師と、がん相談支援看護師が応える無料医療相談。医療のこと、がんのことなどさまざまな相談が寄せられた。
会場では活動に賛同する協賛各社がプチマルシェを開き、イベントを盛り上げた。乳がん患者向けの下着を開発販売する「島崎」(秩父市)やピンクリボン支援チョコレートを販売する「ショコラティエ・アヌーク」(熊谷市)、患者支援小物を制作する「tumugu」、手作りアクセサリー販売の「ハンドメイドのイロドリ」、焼きたてメロンパンのキッチンカーも出店。参加者からは「講演もストレッチも勉強になった」「病院で開催される正しい情報のイベントにとても価値があると思った」との声があった。がん治療中という夫婦は、「夫と一緒に話が聞けて、無料のがん相談もありがたかった」と話していた。
同NPOの大崎幸恵さんは、これまで共に活動してきた藤井みゆきAYA支部長(享年36)が昨年12月に逝去したことを伝え、「今日は藤井さんの37回目の誕生日だった。検診の大切さを母の日、父の日にも伝えてほしい」と来場者に呼びかけた。