
第1回「インディーズ映画フェスBRO!!!2025」が5月25日、七ツ梅酒造跡(深谷市深谷町)で開催された。
2時間にわたって行われた座談会(交流会)。「また来年も開催してほしい」と声があった
深谷市出身の映画監督・安藤舞さんが企画した映画フェス。「地元で映画祭をやりたい」と4年前から考えていたという。ロケ地探しをきっかけに、深谷フィルムコミッションの強瀬誠さんと知り合い、協力・後援を得て実現した。
作品条件は30分以内の自主映画。応募期間(2024年11月~2025年2月)に131作品が集まり、安藤さんと強瀬さんが最終選考作品10作品とセミファイナル選出作品25作品を選んだ。
当日はフリーパス=1,000円を販売し、同敷地内「精米所レンガホール」で最終選考作品10作品を上映。入選した作品の監督や関係者、映画好きの人などが来場した。定員50人のホールは満員だった。最終審査員は、岩井澤健治監督、同フェス実行委員会の強瀬さんのほか、俳優の永井ちひろさんが加わり、グランプリと準グランプリが決定された。上映後、東蔵ホールで授賞式と参加者交流会が行われ、グランプリは「歩兵の本領」(西貴大監督)、準グランプリは「ある冬のできごと」(新井秀幸監督)がそれぞれ受賞した。
「歩兵の本領」は、在職中のトラウマにうなされる元自衛官を描いた13分の作品で、 映画美学校フィクション・コース初等科修了制作。受賞した西貴大監督は「グランプリ受賞は、うれしさと驚きでいっぱい。香川出身の私は、深谷に地元によく似た雰囲気を感じた。深谷愛に満ちた映画フェスは、個性的で温かい雰囲気。最初から最後まで楽しく過ごした」と話す。
「ある冬のできごと」は、何も持たない男が公園で母親から電話を受ける場面から始まる24分の作品。これが初監督作品という新井秀幸監督は「DIY精神と地域愛を感じる親しみあふれる映画祭で、上映作品の選定には、確かな映画への愛とまなざしを感じた。こんなすてきな映画祭で上映できたことは、作品にとってとても幸運。泊めてもらった強瀬さん宅で深夜、映画の話をしたことが胸に響いている」と話す。
強瀬さんから「審査員は一市民がいい」と打診された永井さんは「映画は、身分も名誉も関係なく、観客一人一人のもの。受け取った思いは私だけのものだから、それをそのまま会場に置いて来ようと思って(審査員を)引き受けた」と話す。「作品の評価や興行収入の結果は残酷だ。でも必ず届く人がいて、その人に届けたいと思って作り続けてほしい」とも。
フェス運営全般をサポートし、作品選考や最終審査員も務めた強瀬さんは「主催の安藤監督とは、『手作りで監督や審査員、スタッフ、観客の距離が近い等身大の映画祭を目指す』という思いが共通していた。授賞式後に行われた座談会(参加者交流会)は、立場の分け隔てなく作品を語り尽くす貴重な機会になった。フェスの成功は、安藤舞監督の情熱が波及していったことが大きい。回を重ねて大きく成長することよりも、このまま長く続けていければ」と話す。
安藤さんは「映画を作ることをもっと自由に解釈してほしい。もっと身近に映画を感じてほしい。(タイトルの)ブロは、深谷名産のブロッコリーと仲間を意味するBROTHERをかけた。一生のブロ(仲間)と出会える映画フェス。数年後、数十年後、『このフェスが映画を撮り続ける理由、きっかけなんだ』と言ってもらえるようになることを目指している」と意気込む。