大手企業の開放特許を活用し、学生が新商品のアイデアを出す「開放特許を活用した学生アイデア発表会in埼玉」が12月2日、さいしんホール(熊谷市本町)で行われた。
7校15チームが参加した、中小企業のための「開放特許を活用した学生アイデア発表会 in 埼玉」 。(審査員と入賞チーム)
埼玉県信用金庫が公益社団法人さいしんコラボ産学官と進める、地域中小企業の育成と地域活性化を図る事業の一環。9度目となる今回は埼玉県内7校から15チーム計82人が参加し、最終発表会に臨んだ。
活用した開放特許は、富士通、富士通フロンテック、パナソニックIPマネジメント、リコーが提供。参加チームはブラッシュアップ会、中間発表会などを経て支援企業や団体と協力し準備してきた。発表は1チーム6分。商品コンセプトやターゲット、収益性などを盛り込んだプレゼンテーションを行った。高齢化や人手不足などの社会課題解決につながる商品アイデアやデジタル技術の活用を盛り込んだ提案が相次ぎ、審査員からの講評では、「大変意味深い分野」「常々あったらいいと思っていたシステムだ」「よく研究されている」「力強いプレゼンで分かりやすい」など、着眼点や完成度を評価する声が多く上がった。既存サービスとの比較と優位性や他分野での実現可能性を指摘、アドバイスする場面も見られ、商品化への期待と激励を送った。
最優秀賞には埼玉県立大学のチーム「Body up」の医療DXツール「そこにQあ~る」が選ばれた。入院患者と医療スタッフの「本音を伝えにくい」「忙しくて聞ききれない」というギャップを埋めるために考案した医療ツールで、患者がスマホでQRコードを読み取り、体調や不安、要望などをテキストで看護師に送る。アプリのインストールや専用端末は不要で、病棟や診療科ごとに必要な機能だけを選んで使える設計のため、中小企業でも導入しやすい低コスト・小規模スタートを想定しているという。医療現場の人手不足という社会課題を解決するため、患者が本音を伝えやすくし、医療従事者の情報共有を円滑にする点が評価された。
チーム「Body up」は、筋力トレーニングや地域ボランティア活動を行うサークル仲間4人。病院の実習体験や医療現場の聞き取りを基にアイデアを組み立てたという。チームリーダーで社会福祉子ども学科3年の下田祥大さんは「学生だけで、ゼミでもなく担当教員もいない中、学校や病院の先生方、多くの人の協力を得て受賞につながったことに感謝したい。メンバーは夜遅くまで作業が続いても、誰一人途中で投げ出さなかった。結束力がいい結果につながった」と振り返る。メンバーで健康開発学科3年の松井悠真さんは「楽しさと難しさの両方があった。看護学科など他学科のメンバーと組んだことで、扱う特許を多角的に検討できた。異なる視点、意見をぶつけ合い、成果物はより鋭く精度の高いものになった」と話す。同・健康開発学科3年の川上裕翔さんは「発表前は不安もあったが、練習してきた内容を本番で出し切れた。アイデアという正解がない、時間の制約もある中で、譲れない部分を議論し調整を重ねたことが最も苦労した点であり、一番楽しく充実した時間でもあった」と話す。
埼玉県信用金庫の井上義夫理事長は「どのチームにも、社会課題解決につながる素晴らしい商品アイデアを発表してもらった」と講評した。「提案されたアイデアは、産学官が連携して商品化・事業化を目指す。今後も、関心のある企業と学生チーム、特許提供企業との橋渡しを進めていきたい」とも。