熊谷市のシェア本屋・棚貸し書店「太原堂(たいげんどう)」(熊谷市本町)が6月10日、オープン2周年記念イベント「一箱本の市と軒下珈琲(コーヒー)」を行った。
区画1つ1つが小さな書店になる「棚オーナー」制。現在40人の「棚オーナー」が本や雑貨を販売している
元毛糸店の店舗と店名をそのまま使って営業する同店。2020年に行われたまちづくりワークショップ「熊谷・街・妄想ワークショップ」から誕生した。「街をみんなで楽しく変えていく」活動の一環で「みんなで運営する本屋」として、本を通じて人がつながり、まちづくりに発展させることを目指す。店内では、毛糸が並んでいた1階の陳列棚を40区画に分けて貸し出し、区画1つ1つが小さな書店になる「棚オーナー」制で、現在、40人の「棚オーナー」が本や雑貨を販売している。住居だった2階はレンタルスペースとして1日=2,000円で貸し出すほか、読書会や音楽ライブ、ワークショップなどのイベントも開催している。
「一箱本の市」は、オープン2周年を迎えたことを記念して1日限定で企画。8組が出店し、店舗軒先でドリンク販売も行った。泣ける文庫本や料理本、エッセイ、生活雑誌、絵本、「ちょっと一息」のお供になれる本、「積読(つんどく)しているなら先に誰かに読んでもらいたい」本などさまざまなジャンルの本や雑貨、古道具が並び、訪れた人は手書きの紹介カードや手作りの装丁を見ながら本を手に取ったり、持ち主と話したりしていた。
近所に住む女性は「前から気になっていて、何のお店だろうと思っていた。毛糸屋さんの頃を知っているので懐かしい。雰囲気がいい。今度2階を借りたい」と話した。出店者の1人で都内のブックアパートメントに本を置いているという女性は「本のイベントはいろいろあるが、古本市や委託販売と違ってお客さまとの距離が近く、ゆっくり話ができるので居心地がいい。出店者同士も本の話が尽きない」と笑顔を見せる。
オープン当時、大学で都市計画を学んでいた店主の白根拓実さんは「コロナ禍で授業はリモート、外出もできず、人との関わりが薄れているなと思っていた。まちづくりに関わりたいとワークショップに参加して、太原堂の棚に本を並べたら良い空間になるのではと提案した」と振り返る。在学中は週1~3日の不定期で営業していたが、今春から活動拠点を県外へ移したことを機に運営方針を変え、棚オーナーが交代で店番し営業するようになった。
「2年でおよそ60人の棚オーナーが店と関わってくれた。開催したイベントを通じてたくさんの人にも会えた。これからもコミュニティーが生まれる場所にしたい」と白根さん。「運営する仲間も募集している。棚オーナーは学生も歓迎。自分の好きなことやりたいことなどを表現する場所として使ってもらい、何かにチャレンジするきっかけになれば」と意気込む。「この店を見て、他の空き店舗を使いたい人が増えたら街の活性化になる」とも。
営業時間は11時~16時。営業日はツイッターとインスタグラムで知らせる。