ドキュメント映画「豹変(ひょうへん)と沈黙 日記でたどる沖縄戦への道」の上映が11月16日、深谷シネマ(深谷市深谷町9)で始まる。
1937(昭和12)年の盧溝橋事件から日中戦争、沖縄戦までを描く。名もなき3人の日本兵とやがて徴兵されていく沖縄出身者の「戦中日記」を通して、日本兵が戦場で人間性を損なわれていく姿と、戦後に元日本兵たちが口を閉ざし、体験を胸に秘めて生きることになった日々を描く。
原義和監督は「きっかけは中国の博物館で出会った1冊の写真帳だった。調べると日本兵だった父親の写真帳を息子さんが中国に寄贈していて、韓国にも寄贈していた」と話す。実際に子息と会い、父親が話していた戦中の体験や自身で問い続けた戦争の意味などを聞いたという。作品では、授業資料用に高校教諭が古物商で入手した日記も登場する。「複数の日記の背景を追うことで時代の全体像が描ければと思った」と原監督。
撮影では万年筆で書かれた日記原本を写すほか、役者が日記を朗読し、書家の西端峰苑さんが書道パフォーマンスで日記を再現する。原監督は「残された日記の肉筆が持つリアリティ―を、80年以上たった今のスクリーンで感じてもらおうと思ってこの方法を取った」と話す。
上映する深谷シネマの小林俊道館長は「今年は戦後80年で、深谷シネマでも旧作を含めて戦争関連の作品上映が続いている。10月に上映した『黒川の女たち』のように、戦時中日本が行った加害の事実を次世代の証言などを重ねながらクローズアップする作品が若い世代にも届いていると感じる」と話す。上映初日と最終日の上映後には原監督の舞台あいさつがあり、「お客さまとの距離が近いミニシアターでの舞台あいさつは、作品の理解を深める絶好の機会」とも。
原監督は「こうした作品はフィードバックが大事。本作を見た中国の人の反響も大きく、次回作以降の制作の励みになっている。批判的意見も含めて、感想を聞かせてほしい」と呼びかける。
上映時間は9時30分~11時24分。今月22日まで(18日は休館)。