築300年超えの邸宅と蔵を利用し名画や刀剣などを展示する熊谷市の「長島記念館・邸宅」(熊谷市小八林、TEL 0493-39-2025)で5月18日、市の文化財「名勝」に指定されたことを記念したフォーラムが行われる。
旧埼玉銀行(現在の埼玉りそな銀行)の会長を務めた長島恭助(1901~1992)の生家として知られる同施設。敷地内には江戸時代後期に建立された母屋や長屋塀をはじめ、大正時代に栃木県から産出された大谷(おおや)石を組み上げた石蔵などが保存されている。1993年に長島記念財団が設立され、翌年、邸宅の建造物群や庭園の保存を目的に、長島家が収集した美術品を公開する長島記念館としてリニューアルオープン。収蔵されている美術品は、国内屈指の価値を誇るコレクション内容で、川合玉堂や横山大観、中川一政、須田剋太など近代日本美術を彩る名作が並ぶ。新紙幣の肖像画となる「渋沢栄一」の書も複数作品が展示されている。
2018年から市教育委員会とものつくり大学(埼玉県行田市)が建造物や関連資料などの調査を進め、高い技術を誇る職人集団が建築や作庭に関わったことや、石蔵の大谷石や木材などをはじめ高品質の原材料が使われたことが確認された。枯れ山水様式を生かした庭園や雑木林も四季を通じての景観美が特徴で、地域の政治経済や文化振興に尽力してきた長島家の歴史を今に伝えるとともに、地域を代表する文化財「名勝」にふさわしいと評価され、熊谷市文化財に指定された。
フォーラム当日は、文化財指定に向け調査研究を担当した熊谷市の学芸員による調査報告「長島記念館の景観と文化史」をはじめ、長島記念財団の田沼利将さんを交えた対談、ビオラ奏者の後藤典子さんがJ・S・バッハ「無伴奏チェロ組曲第1番(ビオラ版)」などを奏でる演奏会も企画する。
開催時間は10時30分~12時。ビオラ演奏は11時30分~。入場料は一般=300円、小中学生=100円。