熊谷市指定名勝「星溪園」(熊谷市鎌倉町)で現在、国内外のリトグラフ(平版画)作品を月替わりで展示する企画展が開かれている。
19世紀にスイスとイタリアで活躍した画家のルイージ・キアリバの親族が所有していた美術コレクションの中からリトグラフ作品を中心に紹介する同展。同コレクションは日本国内に移管後、「グラーツコレクション」と命名され絵画の普及啓発として活用されている。「和の空間の中でリトグラフ作品を展示したい」と望む日本法人関係者の思いを受け企画した。新型コロナウイルス感染拡大の影響で開催時期を延期し、国内画家の作品と共に月替わりで展示を行う。
9月の展示作品は明治時代から昭和時代にかけて活躍した画家安井曾太郎が描いた「奥入瀬」で、小品ながら水流の臨場感が伝わる名作。今後はフランスの詩人で画家のジャン・コクトーや多くの風景画を残したベルナール・ガントナー、静物画の評価が高いレイモン・プーレなど欧米の現代画家作品をはじめ、埼玉を拠点に中央画壇で活躍した小松崎邦雄のほか、彫刻家・北村西望や建築家・安藤忠雄の直筆画なども公開する予定。12月からキアリバが描いた人物画のリトグラフを展示する。
熊谷市の学芸員は「フランスやスイスなどのリトグラフ作品に着目できる貴重な機会。日本庭園と共に美術品を味わい、心の癒やしにしてほしい」と話す。
JR熊谷駅から徒歩約10分の場所にある星溪園は、江戸時代末期から明治時代にかけて建てられた別邸と玉の池を囲む回遊式庭園。四季折々の風景を楽しみながら散策できる「街中のオアシス」として多くの市民から親しまれている。企画展は敷地内の数寄屋風建物「松風庵」の玄関、小ギャラリーを使う。庭園とギャラリーは自由に見学できる。
開催時間は9 時~16時。入場無料。月曜休園(祝日の場合は翌日)。2021年8月31日まで。