深谷シネマ(深谷市深谷町、TEL 048-551-4592)で11月29日、映画「ほかげ」の上映と塚本晋也監督による舞台あいさつが行われた。
舞台あいさつに駆けつけた熊谷在住の映画監督・代島治彦さん(左)と塚本監督
終戦直後の闇市を舞台に、絶望と闇を抱えながら生きる人々の姿を描いた同作品は、ベネチア国際映画祭NETPAC賞(最優秀アジア映画賞)を受賞。2015(平成27)年公開の塚本監督作品「野火」に続き、同シネマのある七ツ梅酒蔵跡など深谷周辺で全編撮影された。
舞台あいさつは当初予定になかったが、今月20日に急きょ決定し、23日から公式サイトやSNSで告知。当日9時30分からの上映に70人以上の観客が集まった。
上映後、舞台に登場した塚本監督は「戦時中が舞台だった前作(野火)に対して、戦後も表現しなければ戦争を描いたことにはならないと思った」と話し、気温40度を超える撮影現場や深谷に残された風景、前作から交流のある深谷の人々との思い出などを振り返った。
観客から主演の趣里さんについて問われ、「周囲の空気をすべて飲み込んでアウトプットする力、存在感がある」と話した塚本監督。森山未來さんたちキャスティングの決め手、映画の前半部分に登場人物の名前が出ない理由、脚本の制作過程などを話し、「テーマとして絶望的な混沌が発する祈り、生きろという祈りを受け止めてほしい」と続けた。
塚本監督は「自主映画のことを考えるといつも、映画『JAWS(ジョーズ)』でサメが泳いでいる海で沈みそうな船をこいでいるシーンを思い出す。サメ(=金策)に追われている」と観客の笑いを誘い、「JAWSとはお上手」というフォローする竹石さんに、「さすがですね」と返す場面もあった。
舞台あいさつ後には、ロケに使われた七ツ梅酒造跡の敷地内でサイン会が行われ、製作に関わった関係者も集まった。舞台あいさつの開催を知り、駆けつけたという地元在住の男性は「深谷シネマには時々来ているが、映画が素晴らしかっただけでなく、いろんな人と話ができてよかった。こんなに多くの人を集める映画の力を実感した」と笑顔を見せていた。
12月9日まで。火曜定休。上映時間は、12月2日まで=9時30分~。12月3日~9日=12時30分~。