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深谷シネマで映画「あんのこと」舞台あいさつ 入江監督と交流会も

深谷出身の映画監督・入江悠さん。実話を基にした映画作品は初めてという

深谷出身の映画監督・入江悠さん。実話を基にした映画作品は初めてという

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 深谷出身の映画監督・入江悠さんの映画「あんのこと」の上映が7月14日、深谷シネマ(深谷市深谷町)で始まり、上映後に舞台あいさつが行われた。

深谷シネマ名物の絵看板の前で「あんのこと」上映記念撮影

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 映画「あんのこと」は、実在する1人の少女の壮絶な人生をつづった2020年6月の新聞記事を基に描く人間ドラマ。記事を書いた記者をはじめ家庭内暴力や薬物依存の当事者らを取材し、入江監督が脚本を書いた。主役は河合優実さん。出演は佐藤二朗さん、稲垣吾郎さんほか。

 深谷シネマの上映初日は補助席を含む全67席が予約で満席となり、キャンセル待ちの列ができた。

 上映後、舞台あいさつに登壇した入江さんは「これまで死後の世界とか考えたことはなかったが、彼女に失礼な描写をしていないか、彼女の人生を勝手にまとめるようなことはしていないか、常に空から見られているような気がしていた。フィクションを作っているのとは違う。ライターの戸田真琴さんに『監督はこの作品で背骨を与えられた』と言われたが、確かにこうした映画を作ることは他者の人生を背負うことではないか」と話した。「皆さんが、作品を見て抱いたもやもやは、自分が記事を見つけた時のもやもやに近い。こうすれば良くなるという答えが見つけられなかったから、映画を作りながら見つけられればと思った」とも。

 主演のキャスティングについて質問を受けた入江さんは「(彼女の)他者を想像すること、他者を演じることの真摯(しんし)さが強く印象に残っていて、プロデューサーと話し合って決めた。例えば、河合さんは撮影中一度も毒親という言葉を使っていない。言ってしまうと、こぼれて落ちてしまうものがたくさんあることを知っていて使わなかったのではないか。シェルターから景色を眺めるシーンとか、勉強の楽しさに気付いていくシーンとか、河合さんの体を通して杏がどんなことを感じていたか、脚本を書いている時には分からなかったことが分かった気がする」と答えた。

 入江作品の大ファンという女性は「自分は杏にも母親にもなる可能性があると感じた。つらいけど、見た方が良い映画だと友だちに紹介したい」と絞り出すように話していた。市内在住の男性は「とても考えさせられた。世の中にはいろんなことがあることを、この映画を通して知ってほしい」と話した。

 舞台あいさつ、サイン会の後、同シネマの敷地内にある「東蔵」に場所を移して交流会が行われ、ファンや入江さんの同級生、関係者とさまざまな人々が集まった。東蔵は入江監督の作品「サイタマノラッパー」シリーズのロケ地でもある。幼少期から入江さんを知る同シネマの竹石研二前館長は「緊張感に満ちた舞台あいさつから一転した和やかな雰囲気。入江君の凱旋(がいせん)上映」と笑顔を見せた。

 上映は今月27日まで。上映時間は17日~20日=13時、21日~27日=14時10分。料金は一般=1,800円、シニア(60歳以上)・大学・専門学校生=1,300円。火曜定休。

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