熊谷の情報発信基地「くまがや館」で現在、チベット・タンカ絵師(仏画師)飯野博昭さんの個展が開かれている。
チベット仏画師 飯野博昭個展2018 チベット仏画&オリジナル絵画
タンカ(Tangka)とは、チベット文化圏で描かれる布に描かれた宗教画のこと。細い線を筆だけで描いた精密画で、赤や青、オレンジなど鮮やかな色使いが目を引く。み仏や菩薩(ぼさつ)の表情や配置、ささげものや背景に至るまで絵ごとに異なり、描く際には儀軌(決まり事)があり、間違えることは悪業を積むことになるという。
仏教が生活に深く関わるチベットの人々にとって、タンカは芸術品ではなく信仰の対象として扱われるため、家の祭壇に掛けたり徳を積むために寺院へ寄進したりする。
「仏教が生活に溶け込み、心のよりどころになっている」と話す飯野さん。「例えばチベットの人は日常の悩みごとも寺院に相談しに行く。瞑想(めいそう)するとき、み仏を感じ自分と向き合うため『タンカ』の役割は重要。どの家にもあり『健康』や『良縁』など、願いによって部屋ごとに異なるものを掛ける」と話す。
内容は、チベット仏画(タンカ)とオリジナル絵画合わせて28点を展示するほか、タンカを映したカード、小物類の販売を行う。花や自然を金や銀で描く「線描きワークショップ」(有料)も開く。
飯野さんは「細密な描き込みも見てもらいたいが、難しく考えず、絵を見てゆっくりしてもらいたい。見てくれる人の心が豊かに、和やかになれるように、と思いを込めて神様を描いている。絵は見る人のその時の精神や心の状態によって見え方が違ったり、以前はなかった気付きがあったりする。考えず心で感じてもらえれば」と話す。「タンカを制作すること、そのものが修行であり、苦しいときもあるが楽しい。一生描き続ける」とも。
毎回好評の「線描きワークショップ」はカーボン紙を用いて絵を写し取り、金や銀の色で線をなぞる。普段、絵を描かない人も細かい模様をなぞっているうちに描くことができる。飯野さんは「皆さん集中している。『写経の感覚も得られる』という声もあり、自分と向き合える時間になっている様子。前回は小学生の参加もあった」と話す。
開催時間は10時~17時(最終日は16時まで)。ワークショップの受け付けは14時まで。5月27日まで。