台風19号で市内各地の状況を発信した「FMクマガヤ」(熊谷市筑波、TEL 048-501-8639)が、特別編成での生放送を振り返った。
10月12日、熊谷市と行田市を流れる荒川が氾濫危険水域に達した。市内では暴風雨で浸水の危険がある地域に次々と避難指示が出され、各避難所が開設されていた。同局では12日15時過ぎから13日2時30分までの約12時間、通常放送を差し替え特別編成で生放送を行い、テレビなどの全国放送では伝え切れない各地の災害状況や避難所の情報などを伝えた。
内容はテレビ中継のように川や町の様子を実際にリポートするのではなく、スタッフが熊谷・行田市役所からの情報や近隣の商業施設、店舗、交通機関の情報を確認、精査してパーソナリティーが読み上げる方法。市民から寄せられた避難所の定員情報や避難所までの道路の冠水状況などもリアルタイムで発信した。
「市内の大きな施設だけでなく、近所のスーパーの営業時間も一軒一軒直接電話で確認した」と高井昭博局長。「警報が鳴り避難情報が出ても、市民の方々は『具体的にどう動いたらいいのか』誰もが不安だったと思う。われわれが行った地区別の避難所情報など全国放送では伝えられない情報の発信は、市民の方々の避難の決め手やきっかけになり、防災意識を高めたはず」と振り返る。
放送中は公式サイトへのメールやSNSで「パーソナリティーの放送を聞いて安心した」との声や、スタッフへの励ましの声が寄せられた。高井局長は「避難所の情報などを提供してくださったリスナーの方々に感謝したい」と話す。
その一方で、氾濫の危険がある河川に近づかないよう放送で訴えても、翌日に見に行く人が多かったという情報もあった。高井局長は「情報を出すことで興味を起こさせてしまうことや、『今回大丈夫だったから次も大丈夫だろう』という危機感の低下が懸念され、ラジオで災害情報を伝えることと防災意識を高く維持していくことに課題が残った」と話す。「まだまだ台風の爪痕が残る地域もある。発行しているフリーペーパーや普段の放送の中で、引き続き防災を呼び掛けていきたい」とも。
熊谷・行田を放送エリアとし、周辺地域の情報を毎日生放送している同局。東日本大震災の際にコミュニティー放送局が被災地の人が求める地域情報を発信したことを受け、「地域限定の防災メディア」として今年2月、熊谷市と「防犯・防災情報の緊急放送に関する協定」を締結していた。
周波数は87.6ヘルツ。放送時間は7時~22時。