行田市の古代蓮(はす)会館南側広場と東側の田んぼで6月12日・13日、世界最大級の「田んぼアート」の田植え作業が行われた。
田植え前に気合を入れ写真撮影する参加者ら。令和3年度デザインは「田んぼに甦るジャポニスム~浮世絵と歌舞伎~」
田んぼをキャンバスに、色彩の異なる複数の稲を植えることで文字や図柄などを表現する「田んぼアート」。行田市では2008(平成20)年度に始まり、2015(平成27)年にはギネス世界記録(2万7195平方メートル)に認定された。昨年度はコロナ禍の影響で中止した。
今年のテーマは「田んぼに甦(よみがえ)るジャポニスム~浮世絵と歌舞伎~」、19世紀後半に日本の文化が西洋諸国の芸術文化に与えた「ジャポニスム」に注目する。「ジャポニスム」で絵画の巨匠たちに多大な影響を与えた「浮世絵」から波が押し寄せる嵐の中に見える富士山を、「歌舞伎」から、歌舞伎十八番「暫(しばらく)の主人公が力強さを表す隈(くま)取りと派手な衣装で見得(みえ)を切る姿を田んぼに描き、「田んぼ×文化芸術」で行田から新しいジャポニスムを起こす狙い。
農業体験(米作り体験)の機会を提供する田植え作業は、12日に中学生以上の田植えボランティア377人、13日に田植え体験の165人が事前申し込みにより参加。田んぼ内に立てられた約6500本のくいに沿って背景を描く「彩のかがやき」や赤色の「べにあそび」、黒色の「むらさき905」、白色の「ゆきあそび」などの苗を植えた。子ども3人と家族で参加した父親は「参加は2回目、前回は(ラグビーワールドカップ)リーチ・マイケルの部分を植えた。子どもたちも楽しんで学んでいる。たびたび見に来てだんだん色が変わっていくのも楽しみ」と話していた。「忍城おもてなし甲冑(かっちゅう)隊」の成田長親大将(野原のぼさん)は「田んぼアートは地域の人々にとって楽しみな行事の一つ。2年ぶりに、無事行われたことが大変うれしい。親子の参加もあり、米を植える、収穫する、食べることで良い体験になっていると思う。田植えした稲が育っていく様子を見に来てほしい」と話す。
市では「Edible Art(エディブルアート)プロジェクト」を展開。食べられる芸術プロジェクトとして、田んぼアートで収穫した米を加工し長期保存可能な「ライスヌードル」を防災備蓄職として製造するほか、自宅で田んぼアートを楽しむ「VRコンテンツ」や多言語化する「映像コンテンツ」を公開する予定。コロナ禍でのフードロスやインバウンド縮小による観光業の課題に対し、田んぼアートの取り組みを発展させる。
色とりどりの稲を生育させ見頃を迎えるのは7月上旬以降10月ごろまで。隣接する古代蓮会館にある高さ50メートルの展望タワーからは田んぼアート全体を眺めることができる。